2018年4月27日(金)晴れ


今日、広沢寺の岩場でクライミング講習中に単独クライマーの墜落事故に遭遇しました。

 状況は、私たちが懸垂下降を終了してザイルを片付けているときのことです。

 隣のルートを登って懸垂下降をしていた単独の男性クライマーが懸垂下降中にいきなり落ちてきました。

 幸いな事に落ちた場所が平らな土の上で岩などのでっぱりがなく土の上に体が上を向いた状態で横たわっていました。

すぐさま救助に向かいバイタルチェックをしましたが意識がありません。しかし脈と呼吸はありました。

容態を見ながら声掛けをしていると段々と意識が戻ってきてしゃべれるようになったので一安心。

ゲストの方に119番に電話してもらいましたがauだったためか電波状況が悪く、途中で切れてしまい私のドコモの携帯で再度、通報。

 丁度、その時に単独の男性の方が岩場に来たため介護を手伝っていただきました。

 全身の怪我の様子をチェックしてヘルメット、ハーネス、靴などを脱がせ、救助隊誘導のためにゲストの方に岩場の入口まで行ってもらい救急車の到着を待ちました。

 怪我は後頭部をぶつけたようでかなり大きなコブができていましたが、その他は痛みが無いと言うことでした。
ハイパーレスキュー、救急車が2台、パトカーが次々と集まってきて写真のストレッチャーを使って搬出が始まり、無事に病院へ搬出。


イメージ 1

 私は状況説明のために病院まで行き、落ちた時の状況、怪我人の症状などを詳しく説明。

 怪我の詳細はまだ分かりませんが軽傷と重症の中間の中傷と言うことだそうです。

 落ちた状況ですが、この単独の男性はザイル1本で2ピッチの懸垂下降をやっていました。

 1ピッチ目は無事に終了して地上から約10mの高さにあるビレーポイントにザイルをセットし2ピッチ目の懸垂下降を開始。そして半分ほど懸垂下降したところで突然墜落。

ビレーポイントのボルトは全部残っていましたのでボルト抜けでの墜落ではありません。

 懸垂下降中にいきなり墜落したと言うことはセットしたザイルの片方が下まで届いておらず、途中ですっぽ抜けた可能性が高いです。

 不幸中の幸いで墜落距離は5mほどで済みましたが上のビレーポイントから墜落していれば助からなかったかもしれません。

とにかく懸垂下降の失敗は致命傷になる確率が高いです。。

ベテランクライマーと言えども安全確認は必ず実施しなければいけませんしパーティであればお互いの安全確認も実施してミスを未然に防ぐ必要があります。

 今回はシングルザイルでの懸垂下降なので末端をしっかりと合わせてザイルの長さをそろえて投げていれば起こらなかった事故です。

 地上までの距離もそれほどないしザイルが届いているだろうとの思い込みが原因ではないでしょうか?

 私は山岳ガイドと言う仕事柄、あちこちの岩場でたくさんのクライマーを見ていますが、正しい技術を知らないのか手抜きをしているのかは分かりませんが危ないことをやっているクライマーをたくさん見かけます。

 致命的になるような事をやっているクライマーには即座に注意しますが、素直に注意を聞いてくれるクライマーがほとんどですが、中には何が間違っているかさえ分からないクライマーや自分の間違いを認めないクライマーもいます。

 山仲間のグループなどでも先輩クライマーが全て正しい知識を持っているとは限りませんし、間違った技術が先輩から伝承されてメンバー全員が間違った事ををやっていることもあります。

クライミングをやるからには登る技術向上よりも、何をやったら危険なのかと言うのを一番先に覚えなければ命がいくつあっても足りませんし、教える側も絶対にやってはいけない危険行為をしっかりと教えなければなりません。

クライミングはお互いにパートナーに命を預けて行うスポーツです。

 最近ではSNSで知り合った初顔合わせの人と一緒にクライミングに行ったりする人も多く見受けられますが、相手の技術は信用できますか??

 私は相手の技術を確認してからでなければ怖くてビレーは任せられません。

 私のクライミング講習会ではクライミングが初めての人には登る前にしっかりと確保技術を身に着けてもらって、危険行為をしないように各種技術を覚えてもらっています。

とにかく自分の命は自分で守りましょう。

クライミングや登山はほんのちょっとしたミスが命取りになると言うのを肝に銘じで登りましょう。

 安全登山、安全クライミング第一で!!

 長文失礼いたしました。<m(__)m>